暑い。直射日光に晒されたウルダハでこの日は荷下ろしの仕事。

しかも空気がじめっとしていて風の一つも吹かず、夜には雨が降りそうな気候。服が汗で肌に張りつくのが不快で、終わったら冷えたパインでも食べようかな、そんなことを考えながら重たい商品を抱えてナナモ新門とサファイアアベニュー国際市場を行き来していた。

近道をするためザル回廊を横切る。道中にコロセウムやパールレーンといったチンピラやたかりゆすりを生業にする奴らが屯する場所があるのだが、最近の自分は人間相手でも腕が立つようになってきたし、万が一絡まれても商品を守れるだろう。

実際この日も、刃物を持ったチンピラが十数人で良からぬことを画策している現場を見かけたので、往復がてらその会話に聞き耳を立ててみた。

ターゲットは高く売れる薬を持っているだの、それが巷で噂の美女だの、鴨が葱を背負って来ただの…、随分と詳細に計画の全容を聞き取れたのは自分が聴覚に優れたミコッテなのに加えて、これからのお楽しみを想像して気分が上がっている男共の声が大きかったからだ。

不滅隊を名乗って中止を促すこともできるが、今は荷運び中だし、治安の悪いこの国でいちいちチンピラに構ってられない。

他の誰かが止めてくれるだろう。それにしてもアホな奴が多いなぁ…と思いながら通り過ぎた。

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「よしっ、これで最後」

「ありがとねえ、いつも助かるよ。今日は暑いからこれで冷たいもんでも食べな」

ひときわ重たい木箱を慎重に地面に置く。全ての荷物を店の裏手に運び終えたのを確認した店主から給料とは別に小銭を手渡された。冷たいものを食べようと、ちょうど同じことを考えていてたので、店主の細やかな気遣いに嬉しくなって思わず笑みが溢れる。ありがと、と伝えれば髪をくしゃっと撫でられ、そのまま別れた。

拠点への帰路についてもよかったのだが、妙に先程のチンピラのことが気になった。